懺悔残響04

2019年11月29日

 残念でないと言えば、嘘になる。
  同年代で、身内も恋人も固定バディもいない捜査官。
  その中でもまぁ仕事の出来る方で柳徹を当て込んでいたのだが、アテは外れた。
 (なかなか居てへんのよね。死んでも誰も文句つけひん人材て)

  仮に捜査官同士のバディが失敗して悲惨なことになってしまっても、対外的なリスクを抑えられると思った。だがこの分では、また他を探すしかないようだ。
  さいわい、見繕った人材は、柳の他にもまだいる。
  (ほな、聞き取り始めなあかんね)
  手元の人員リストをぱらぱらめくる。
   本部に属する人間で、バディが死んだり怪我をしたりした人物のリストだった。
  事件後に提出された事件報告書と、簡単な職員のプロファイル、これまでの経歴や仕事についての職員報告書。
 (どいつもこいつも、可哀想に)
  どこか魂の抜けたような顔写真を長め、くすみはわずかに目をすがめた。

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 階段を降りていた雨山くるみは、柳徹とすれ違った。
 「前見て歩け、柳徹」
  柳は億劫そうに振り返り、「なんだ」と呟く。
 「お前か」
 「お前かってなんだよ」
 「今お前って気分じゃねぇんだよカロリー高ェ」
 「アラサーじじい」
 「上手いこと言えてねえからな」
  雨山は不思議そうに柳を見る。元から覇気のない男だったが、今日はまた一段と、目が死んでいる。
 「どうした? 腹でも壊したか」
 「疲れてんだよ、絡むな」
 「ヤニ吸ってるとすぐ息切れするぞ」
 「うるせぇなホント......」
  柳は無造作に手を伸ばして、雨山の額を指で弾く。
「 あいたっ!」
  額を抑えてむっとする雨山を抑え込んで、柳はため息をついた。
 「どっか向かう途中だろ、サッサ行けよ」
 「それなんだけど、場所分からなくて」
 「しょうがねぇなぁ、どこ行くんだよ」
 「案内しろ、柳徹。第4資料室だ」
  ぴくりと、柳の動きが止まる。
 「お前が? 何しに行くんだよ」
 「知らない。呼ばれた。時間ないんだから早く案内しろよ」
  柳は思案するように雨山の顔を見た。
 「お前、宗くすみと知人か?」
 「宗さん? 知ってるけど」
  柳は軽く脱力した。
 「ならいい。第4資料室ならこっちだ」
  先導する柳の後ろを、雨山は少し不思議そうに首を傾げてついていった。

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